June 16, 2005

アメリカン・パイ&チーズケーキ

自由が丘にケーキ屋さんの複合施設、

スイーツフォレストがある。

アミューズメント施設のケーキなんてたかが

知れてるとかウガった態度で行ったわりには

スフレ、ウマっとか喜んでたのは兎に角、

注目すべきはスイーツフォレストの

下の階にある料理洋品・製菓材店、「cucca」だ。




製菓材店というと町田の冨澤商店のような

粉・乾物問屋から派生したような店もあるが、

多くは成城石井のようにスーパーの中の

製菓材売場的扱いで、その売場場面積は広くない。

合羽橋のような専門店街でも製菓材を中心にした

大型店舗というのは見たことない。

でもcuccaは製菓材がメインの店舗で、

天井が高くて広い店内にたくさんの製菓材がならんでいる。

店舗デザインがFranfranなんかのような感じなので

みためオシャレで中身はたいしたことなさそうな

先入観をもってしまいそうだが

しかし並んでいる商品ははばひろく見てて飽きない。

料理本もビジュアルブック的なものから

「お菓子・こつの科学」のような専門的な本(超良書。ヨメ!)まで

ナイスなチョイスで並んでいる。




さて。そのcuccaの店頭からは

奥の壁一面にカラフルなミキサーが並んでいるのが見える。

アメリカ定番のキッチンエイド社のものだ。

日本でもよくケーキなんかをつくる人には

定番のミキサーで、沢山の材料を

一気にまぜあわせることができる。

日本では白いイメージが強いのだが

アメリカではカラーバリエーションがあり、

好きな色のミキサーを選ぶことができる。

cuccaに置いてあるカラフルなミキサーは

きっとアメリカ版だ。

アメリカでカラーバリエーションがあるってことは

それなりの数の需要があり、

沢山の台数が販売されているんだろう。

しかしこんな巨大なミキサー、普通は必要なくて

むしろデカいぶんだけ取り回しが悪い。

なんでアメリカの一般のご家庭が

これを必要とするのかずっと不思議だった。

つまりオレはアメリカのパンやケーキについて

まったくわかってなかったのだ。




去年何度かロサンゼルスに行く機会があって、

一番コマッタ食べ物がパンとケーキだった。

他の食べ物ならそれなりにウマイものが

手軽に手にはいる。

ラーメン屋だってそこそこだし、

お寿司やさんもいろんなところにあるし、

吉野屋にいたっては豚丼なんてあるはずもなく、

ちゃんと牛丼あるから日本よりある意味ウマいし。

(いや、日本の豚丼もウマいとは思うが。)

しかしパンやケーキを求めてスーパーに行くと、

乾燥してガビガビの、異様に賞味期限の長い

袋入りのパンしか売ってない。

ごくたまにスーパーの中にパン屋さんが

入っていることもあるのだが、

基本的に売り方も大ざっぱだし、

味も大ざっぱ。アメリカの持つ

@ステレオタイプな悪いイメージが

凝縮されているようだ。

根本的に味にやる気が感じられないし、

「超熟」でも煎じて飲ませてやりたい。

スタバ等のカフェのパンの方がまだマシだ。

スタバには日本と同様、パンも置いてあるのだが

ウマさを求めて食べるものではないし。

(でも最近はじまったラインナップはウマイ!)

よく借りてたオークウッド・アパートの

近所のカフェのパンは結構うまかったけど

ラインナップはモチモチのベーグルのみ。

いやベーグルはウマいんだけど、

ふわふわのパンとかフランスパンも食べたいんだってば!


あと、アメリカといえばパイの国だと思ってた。

だからどこに行っても折りパイのルバーブのパイが

たらふく食えるとばかり思ってた。

しかし目につくのはスーパーの箱入りパイばかり。

なんで紙の箱に入ってるパイの賞味期限が

数ヶ月とかあるんだか。

しかも生地は折りパイどころか、

クッキー生地とみまごうばかりの密度っぷりだ。

つーかコレ、オレ的にパイじゃないし。

いくら空気が乾燥してるからって、

普通半年たったパイはおなかとせなかがくっついちまうゼ。




結局まわりの人にうまいパン屋を訪ねて

ラ・ブレア・ストリートにある

ラ・ブレア・ベーカリーという、

評判のパン屋を友達と探した。

あとチーズケーキファクトリーにも行ってみた。

うまかった。

たしかにうまいんだけど、何かが違う。

パンは粗挽きコムギの

香ばしさがそのまま生かされたような味だ。

まわりはザクッ。中はサクッ。

チーズケーキの味も、ケーキとしての繊細さを欠いてる。

きっと30inchはありそうな深くて大きい型に

粗挽きクッキーを敷き詰め、チーズと生クリームを

おもいっきりまぜあわせたものをスリキリいっぱい

盛ったようなイメージだ。

そのチーズでできた巨大なサンカクが、

ゴハンで腹一杯の後に出てくる。

地元の人だってお持ち帰りサ。




オレ的にはケーキやパンは魔法だと思っていた。

素材に魔法がかかると、

素材の持ち味を飛び越えた味と触感が現れる。

それは絵の具の色をまぜあわせて絵を描くと

絵の具にはない世界が絵に現れるのと同じだ。

だからラ・ブレアストリートのパンのような素材そのままの

荒い味のパンは、うまいけど期待はずれだった。

もちろん高級ホテルやビバリーヒルズのレストランに

行けば、ディナーの最後には宝石のような

ケーキが出てくるのだろう。

またロサンゼルスじゃなくって、ニューヨークに行けば、

ちがった状況があるのかもしれない。

兎に角、東京のようにモンサンクレールや

オーボンヴュータンのようなレベルの高いケーキが

気軽に買える状況とはかけはなれている。

別にアメリカのモノすべてがおおざっぱかっていうと

そんなことは全然無いのだけれど、

パンとケーキに関しては期待が高かっただけにとても残念だった。




さて。ロサンゼルスでの仕事を終えてから一年経ち、

また今まで通り日本どころか関東からすら出ない生活を

おもしろおかしく過ごしていたのだけど

最近モウレツに食いたいのが、

アメリカっぽいパンやチーズケーキなのだ。

嗚呼、さんざんバカにしていたあの

おおざっぱな味が、今はなぜかすごく恋しい。

それは肉料理と同じだ。

アメリカの肉料理はウマい。

堅くて肉の味がスゲーする。

日本のやわらかくてアブラだか肉汁だかよくわからない

味のしないクニャクニャした貧弱なモノとは大違いだ。

もちろん、うまい焼き肉やしゃぶしゃぶも

あるんだけど、でも堅いステーキの持つ

歯ごたえと肉のうまみとは別の味だ。

ラ・ブレアベーカリーのパンも噛むと

小麦の味がする。ような気がする。

チーズケーキファクトリーのケーキも、

似たような味のケーキは東京でも食べられるが

なんかちんまい。バリューって概念があんま無い。

アメリカならガシっとした味を、

おなかいっぱい食べられるデース。




きっとこれがアメリカの味なんだ。

素材をガッツリまぜあわせて

そのままの味を組み合わせる。

その中には色々な素材の持つ

魅力が個性を保ったまま残っていて、

色々な粒度が複雑に絡み合っている。

その複雑さの中には、きめ細やかに混ぜ合わされて

合成されたケーキには無い、個性と魅力が詰まっているのだ。

で、そんなケーキやパンを作るために

アメリカ中のご家庭でキッチンエイドのミキサーが必要とされる。

そしてアメリカのケーキやパンの持つ強い個性が

ママの味(パパかも)となって、

人々の記憶に家族の思いでとして残っていくんじゃないかな。

キッチンエイドのミキサーがアメリカのご家庭の特色に見えるのは

そんな背景があったりなかったりするんだぜ、きっと。




スイーツフォレスト

http://www.jiyugaoka2.jp/~sweetsforest/

La Brea Bakery

http://www.labreabakery.com/labrea/

KitchenAid

http://www.kitchenaid.com/home.jsp

http://www.fmi.co.jp/contents/cafe/kitchen/

お菓子「こつ」の科学

http://www.shibatashoten.co.jp/bookstore/book/000329.html

YOSHINOYA

http://www.yoshinoya-dc.com/en/

http://www.yoshinoyausa.com/

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