March 21, 2005

エターナル・サンシャイン・コンテスト




エターナル・サンシャインの映画公開と同時にCMコンテストも始まった。

映画が始まる前にこのCMコンテストのCMが流されているので

そこでこのコンテストを知った人も多いかもしれない。

現在、エターナル・サンシャインに使用された

映像素材等をexciteの特設webpageで一般公開している。

それを使って誰でも自由に映画のCMをつくり、

応募してもらうというのがこのコンテストの内容だ。

http://www.excite.co.jp/cinema/special/eternalsunshine/cm.dcg




映画公開後にCMを募っても…という気もするが、スポンサーのadobeとしては、

クリエーターからの注目が高い監督、ミッシェル・ゴンドリー作品を通じて、

自社のツールを使った映像制作をおこなってもらうきっかけとしたいのだろう。


兎に角、映画の映像データをWebに公開して

コンテストを開けるってこと自体がスゲーと思う。

しかも題材はハリウッド映画だ。


映像をつくるモノはだれでも、作品の原形を気にする。

素材を最終的に作品としてまとめられた姿は制作者の総意を汲んだモノであり

ベストを尽くした結果だ。

だからそれに手を加えることをいやがる作者も多いし、

自分の表現に対する意志と最終的な作品のミスマッチを防ぐために、

それを行う人をあらかじめ指定する場合も多い。

たとえば女優さんだったら、

自分の写真を撮ってくれる写真家を指定することがあるし

監督さんだったら編集者を指定して編集作業を行う。

他者の作業が作品のクオリティを左右するし、

自分の行った表現がそれを観る人につたえられるかはどうかは、

後段で作業を行う人の腕による。

自分がうまくやっても後段の作業を行う人が

プァではうまく作品に残せない。

それどころか自分の意図しない部分や自分が隠したい部分が

クローズアップされてしまう事もある。

なのにエターナル・サンシャインでは一般の人に映像を渡して、

それを自由に加工することを奨励するような広報活動を行っている。

このような活動を実現するには、作品を作る人の度量が試されるっていうか、

自分の作った映像を元にどんな映像をつくられてもかまわないっていう

大人な態度が必要だ。

もちろん今回は作品をつくるコンテストではなく、

そのCMを作るコンテストだ。

公開されているのも映像素材ではなく完成された作品の中の部分映像だし

それほど表現的に意図しないような映像を

作られてしまう自由度も無いのかもしれない。

でも、ここ数年、制作者の権利ばかりが主張され、

サンプリングによる音楽など何度も問題になっている。

作品を手にした人がそれを改変する自由が失われている昨今、

こういった映像表現を用いたコンテストが

行われることはすばらしい。


また、ハリウッド映画でこのようなコンテストを開催できることも意外に感じる。

ハリウッドには俳優や映画製作者それぞれの立場を

守るギルドが存在する。

ハリウッドのあるロサンゼルスにおいて、映画産業は巨大な市場だ。

だから日本では銀行や証券会社が社会的な評価を得ているのと同様に

ロサンゼルスでは映画会社も社会的に強い立場を持っている。

それに対して役者というのは、なりたい母数が巨大なわりには

実際それをつづけていけるのは本当に一握りの人々だ。

だから大会社である映画制作会社の言いなりになりやすい。

そこで役者は組合に入って団結し、自分たちの権利を守ることで

大会社による才能の搾取から自らを守っている。

ところがこういった組合は保守的な考えを持ちやすい。

たとえば役者ができることをCGで制作しようとする映画には強い反発を行う。

役者の仕事を守り、CGとの役割分担を明確にするためだ。

だから今回のような、映画の素材を一般に開放して編集させるような

映像の2次使用については、役者や編集者の組合が

反発するんじゃないかと思ってた。


しかし、ギルドはただ守るだけではない。

役者の活躍する場所を広げるためには協力を惜しまない。

たとえばロサンゼルスには映画を学ぶ学校が色々ある。

その中でももっとも有名な大学の一つ、南カリフォルニア大学

( USC:University of the Southern Carifornia )は

そういった俳優の組合との協力関係を持っている。

映画学科の授業では、本物の俳優さんや女優さんが派遣される。

学生は大学や大学院の頃から、俳優さんを相手にした

クオリティの高い映像制作を学ぶことができるんだ。

そしてプロの俳優さんを通してその表現力を使うことを学んだ学生は

卒業後映画やTVの制作の職に就いたとき、

俳優の表現力を有効に引き出して利用することができるようになる。

結果学生の映像制作にギルドが協力することで俳優にも学生にも

メリットを産み、ハリウッドの持つ表現力を高めることができる。

だから俳優組合は教育活動に協力するんだ。

今回も映像製作の普及と促進という目的が、

ハリウッドの映画製作会社や各種組合の目的と合致すると考えて

日本でのコンテストに許可を出したのかもしれない。


日本の映画産業に彼らがどれだけの関心を

持ってるかっていう気もするが、

すくなくともホラー映画に関しては

清水崇監督「THE JUON/呪怨」

中田秀夫監督「ザ・リング2」と、立て続けに

ハリウッド資本による全米ヒットを実現している。

またポケモンやパフィー等の日本発キャラクターによるアニメの人気も根強い。

南カリフォルニア大学で行われている、

アニメ等を題材とした日本文化の授業の人気も高いと聞いている。

最近は多少なりとも意識はされているのかもしれない。


今回のコンテストがどのような契約の元で実現しているのかは

サッパリ謎だけど、兎に角、異国の地で映像データの公開を許可しての、

一般の映像クリエーターを育てるきっかけを作った

制作者や配給会社、俳優さん等々、みんなエラいと思ったし、

それを実現したgagaの人やadobeの人もミンナエライヨ!

権利は観客を縛るための綱ではない。許すためにあるんだゼ。


さて。CMづくりのための映像素材をdownloadして観てみたんだけど…

別々の要素についての重要なシーンが用意されてる。

ごっちゃにすると15秒では伝えきれないような気もするし…コマッタ。

っていうかオイオイ、かなりラストシーンに近いトコまで入ってるヨ!

イイノカナ??


とにかく映画未見の人は素材映像観ちゃだめダ!

予備知識ゼロで映画館へゴー!

何度も言うガ。

オレ、2回目観てきましたが、ジワっときますぜ、ダンナ。


エターナル・サンシャイン CM Contest Download Page

http://www.excite.co.jp/cinema/special/eternalsunshine/dl.dcg

ハリウッドの組合特集:「俳優組合」とは

http://www.mahlesq.com/htm/pu b31.htm

にっちさんのハリウッド留学コラム

http://www.nitch.net/

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