March 7, 2005

CHANEL社長とココ・シャネラー




CHANELの創始者、ココ・シャネル(本名:ガブリエル・シャネル)は、

いわばファッションの力で女性を解放した人だ。

それまでのコルセット必須の動きにくいドレスを

コンパクトで軽やかなものにしたし、

女性のファッションにパンツスタイルを持ち込んだり

ショートカットを普及させたりした。


またダイヤモンドのたくさんついたアクセサリーを崩して

より安価なアクセサリーを作り、

普段の生活でも気軽に身につけられるようにした。

彼女は決して、女性を男性化させたわけではなく、

ただ、女性の美しさをカジュアルなものにしたんだ。

No.5がゴテゴテのロココ調ガラス瓶ではなく、

飾らない薬瓶のようなデザインに収まっているのもそのためだ。

香水をハレの日の特別なものではなく普段着にしたんだ。


商品そのものが優れているだけではなく、

それまでの抑圧された女性のライフスタイルをデザインの力で変えた。

それがココ・シャネルのデザインのすごいところなのだ。




こないだ六本木ヒルズで、CHANELの日本法人社長、

リシャール・コラスさんの講演を聴いてきた。

コラスさんは、Fashionの歴史でよく語られる

ココ・シャネルについてのエピソードを、

写真をもとにジョークを交えて熱く語った。

(もちろん日本語で。)

また彼はCHANELがいかに

ココシャネルの精神を守ってきたか、

彼女の精神を今の時代に具現化する職人や

デザイナーたちを大事にしてきたかを語った。

これらの内容は、CHANELというブランドの持つ

本質をよく理解させてくれたと思う。

女性がいつも美しくあるために

CHANELはずっと努力してきたのだ。




講演の最後にこんな質問が観客から出た。

「本来CHANELを身につけるべきではない人が

 CHANELのイメージを下げている問題をどう思うか」

コラスさんは

「その質問大好き。必ず聞かれる。

 ココ・シャネルはすべての女性のためにデザインをした。

 だからCHANELを身につけるべきではない人は存在しない。」

と言った後で話を続けた。


CHANELのイメージを下げた人というのは

いわゆる「シャネラー」のような人の事を指しているのだろう。

ああいった人が増えてしまった原因には

CHANEL側の問題もあったと考えているそうだ。

90年代はCHANELの側にも客を選ぶ傾向が

あったかもしれないと認めている。

かならずしもすべての客を歓迎するような雰囲気には

なかったかもしれないそうだ。

それはCHANELの意志を伝える雑誌への対応にも

あらわれていた。たとえばCHANELの新作のショーに

招待する人数は全員で200人程度。雑誌の編集部だと

副編集長クラスまでで、現場で実際に記事を書く人は

参加できないことが多かったそうだ。

また、たとえば光文社の「JJ」のような若い女性向けの雑誌には、

CHANELは協力的ではなかった。

その結果JJでは独自にCHANELの商品を集めて

CHANELの意志の介入しない形で記事が組まれてしまった。

つまりFashionに一番興味のある年齢層に対して、

CHANELは自分たちの意志を正しく伝えられない状態となってしまった。


結果、市場調査ではCHANELのブランドイメージ自体はすべての年齢で

依然として高いままなのに、売り上げが伸びない結果となった。


コラスさんは

「お客様はCHANELに関心を示してくださっていたのに、

 CHANELは自分には関心を持っていない

 自分はCHANELの客ではないと思われてしまった。

 しかしココ・シャネルはすべての女性のことを考えてデザインを行った。

 だからCHANELはあなたがたのためものだ、という態度を示す必要があった。」

と言っていた。

そのためにCHANELはデパートの特定スペースだけでなく、

ふつうの人が通るような場所にも場所を借り商品を展示した。

またプレタポルテだけではなくオートクチュールも展示した。

そして「CHANELはこんなにすばらしいものを作っていますよ」ということを

選ばれた人ではなく、すべての人に観てもらおうとした。

2005春夏コレクションでは、できるだけたくさんの人に観てもらおうと、

あたらしくできた銀座店に近い日比谷公園に巨大な建物を作って、

延べ一万人以上の人を招待した。

業界関連の人達だけでなく、一般の人や地元の小学生にも来てもらった。

沢山の人に直接目の前で観てもらうことで、

新しくて美しいモノのもつ感動を伝えようとした。

そして最後に、今モデルさん達が歩いたレッドカーペットを通って

観客が会場を出るような演出を用意した。

一方でCHANELは内外格差の是正も行った。

結果、国内ブランドの同種製品よりも

舶来品であるCHANELの正規品の方が安くなるような逆転現象も起こった。

しかしこれも現在の日本市場規模を考えた上で、

できるだけCHANELの使用機会を増やすための判断だったそうだ。

こうした努力の結果、CHANELは日本国内で

700億円の売り上げを達成しようとしている。


国内一位の Louis Vuitton は1000億円の売り上げを誇る。

CHANELも売り上げ1000億円達成を将来の目標にしてはいるが、

無理してそれを達成するつもりは無いそうだ。

たとえば廉価なハンドポーチを出せばCHANELの売り上げは飛躍的に伸びる。

しかしCHANELは安易にそれを出すことはしない。

なぜなら、元々女性の手をいつもふさいでいたハンドバックに肩紐をつけることで、

女性の両手をバッグから解放したのはココ・シャネルだからだ。


コラスさんはココ・シャネルを信じている。

だからこそ、熱意と余裕を持って語れるんだ。

そんなコラスさんをうらやましく思ったし、

そういう社長が責任を持って経営しているCHANELをうらやましく思ったゼ。


このようなCHANELの姿勢を踏まえたうえで、

本当にシャネラーと呼べる人を考えてみると、

それは決してCHANELを沢山身にまとっている人ではない。

ココ・シャネルの考え方を体現できる人が真のシャネラーなのだ。

CHANELの商品はそれを行うためのToolでしかない。

だから別にCHANELを身につける必要すら無いのかもしれないし、

無印なんかも活用してココ・シャネル的な考え方を示すこともできるかも。

ただCHANELならココ・シャネルの意志を実現しやすいだけだ。

めざせココ・シャネラー!




さて。恋愛も同じことがいえそうだ。

つまり手段よりも目的が大事で、その目的をかなえるために

情熱をもって手段を考えるのが大事というか。

相手がいかに自分のことを想ってくれていても

相手に自分の想いを伝えられなければ去っていくだろう。

だからちゃんと与えたり伝えたりして努力して

お互い関係を築いていくのが大事なのサ。

「受け取るよりは与えるほうが、はるかに嬉しいものね。

 それは仕事にかぎらず、恋愛でもそう 」 Coco Chanel

だってサ。押忍。




ちなみに今ではCHANELの方からJJ編集部に申し入れ、

共同で記事を作ったりして、

CHANELの意志を若い女性にも正しく伝えようとしているそうだ。






Discover CHANEL (←ダジャレ!?)

http://www.chanel.com/info/inside/media/frameset.php?zone_lang=ASIJP

井上篤夫の眼-ココ・シャネル

http://www.ainoue.com/ai/1-10/1coco.html

「千代田区の子どもたちもうっとり!」

http://www.city.chiyoda.tokyo.jp/news/release/20041204/1204_3.htm

アカデミーヒルズ

http://www.academyhills.com/

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